第19回 食べて見て座談会 活動報告
第19回「食べて見て座談会」
2025年9月1日(月)、第19回となる「食べて見て座談会」が開催されました。
このイベントは2020年10月に第1回が行われて以来、Washoku Lovers 主催で第18回まで続けられてきましたが、今回からは新たに発足した NPO法人 オセアニア日本食レストラン協会(WASHOKU OCEANIA NETWORK/通称 WON) が主催を引き継ぎます。
オーストラリア日本食親善大使・出倉秀男氏の協力を得て、NPOとして初めての開催となった本座談会。当日は天候にも恵まれ、午後3時の開始前から多くの参加者が集まり、和やかな雰囲気の中でスタートしました。
司会は、第1回から務めている元 Washoku Lovers 代表で、現在 WON 副代表の Yuri Tazunoki 氏。新設 NPO の紹介を交えながら、円滑に進行します。
参加者は、飲食業界の第一線で活躍する料理人や関係者が中心。自己紹介の後、出倉秀男氏、NPO役員の Ohuchi Takashi 氏、Ryota Kumasaka 氏、Yuri Tazunoki 氏、そして WON 代表で今回の講師を務めた Takumi Kawano 氏 が挨拶を行い、本格的に座談会が始まりました。

講師・Takumi Kawano 氏の登壇
Kawano 氏の登壇は、第1回・第14回に続き今回で3度目。過去には以下のテーマで講演を行っています。
- 第1回(2020年):料亭「吉兆」で培った経験をもとに、鯛茶漬けを題材とした調理紹介と料理哲学
- 第14回(2024年):日本料理の歴史と健康食をテーマに、一汁三菜や精進料理を現代風にアレンジした事例紹介
そして今回(第19回/NPOとしては第1回)のテーマは――
「視覚で楽しむ『和』の世界と味覚変化の体験」
「アートと味覚を通じて和の季節感を感じる」
というユニークな試みが行われました。

第1部:食材で描く、季節の風景
最初のセッションでは、「和の器を使わず白い器だけでどこまで和の世界を表現できるか」 という挑戦が披露されました。
海外では和の器は高価で手に入りにくいため、織部焼や備前焼などの器、唐草や山水、竜田川といった文様を使わずに“和の世界”を表現する方法を紹介。
抹茶、ビートルート、ブラックベリーなどの自然素材を“絵の具”に見立て、桜や竹の景色を器に描くように盛り付けた料理は、まるで絵画のよう。参加者も実際に体験し、食材を使った表現の奥深さを共有されました。
このとき使用された抹茶は Simply Native 提供のサンプルで、その色・香り・粒子の細かさに参加者から感嘆の声も。
さらに、「白磁に筆で描いたように見せる技術」も披露。表現の鍵となるのは“濃度”で、分子ガストロノミーの発想を応用。特殊な自然由来の粉を使い、習字をするように描写する実演が行われました。
この粉は一般的な片栗粉やキサンタンガム、アルギン酸やカルシウム類でもなく、当日限りの特別公開。参加者に強い印象を残しました。

第2部:味覚が変わる!? ミラクルフルーツ実験
後半では、Kawano 氏が独自ルートで入手した「ミラクルフルーツ(ミラクルベリー)」を用いた実験が行われました。
この赤い果実に含まれる“ミラクリン”というタンパク質は酸味を甘味に変える作用を持ち、レモンやライム、グレープフルーツなど酸っぱい食品が驚くほど甘く感じられます。参加者は「レモンが甘くなる」という魔法のような体験を楽しみました。
当日はレモン・ライム・グリーンアップル・キウイ・グレープフルーツに加え、チェリートマトや金柑など多彩な果物も用意。さらに、ビーツで色付けしたザワークラウトや、ベリーを使ったオリジナルのデザートも紹介されました。

このデザートは、グルテンフリーのライスクラッカーに、ブルーベリー・ラズベリー・ブラックベリーを乗せ、和の調味料(味噌やきな粉)、オーストラリアのネイティブハーブ「レモンマートル」、さらにマスカルポーネチーズを隠し味に加えた一品。酸味のリンゴ酸やクエン酸を取り入れることで、味覚変化をより楽しめる工夫がなされました。
また、解説では図を用いながら「ミラクリンが甘味受容体に結合し、酸味が甘味として認識される仕組み」を分子レベルで説明。普段は意識しにくい酸味の奥深さを体感でき、参加者からも高い関心が寄せられました。

普段なかなか意識しない「酸味の奥深さ」に触れ、新しい味覚体験を味わえ「味覚や視覚をどう料理に活かすか」を改めて深く考える機会をいただきました。
準備した補足資料も、学んだ知識を定着させる助けになり、
- 味覚を変化させるその他の要因
- 飛行機内での味覚変化と日本料理の相性について
- ミラクルフルーツ以外にも味覚を変える4つの食材
など、Takumi氏の研究内容もまとめられていました。

おわりに
第19回(NPOとして第1回)の座談会は、大盛況のうちに終了しました。
参加者からは「新しい体験ができた」「料理の可能性を感じた」といった声が寄せられ、大好評。
もしこの記事を読んで「体験してみたい!」と思った方は、ぜひコメントください。要望が多ければ再開催も検討します。
また今後も WON では、料理人や食文化に関わる方々と共に、日本食の魅力を探求し、広く発信していく予定です。
イベントは 登録会員(無料) に優先案内しています。会員になると招待や割引などの特典もありますので、ぜひご登録ください。
料理人の方で「我こそは!」と思う方や「こんな料理を広めたい」という方は、ぜひ講師としての登壇もご検討ください。