February 2, 2026
2:00 pm - 4:30 pm
Dekura Studio
Hiro Kano

【食べて見て座談会|料理の裏側】Hiro Kano インタビュー

Temaki

【食べて見て座談会|料理人インタビュー】

次回講師インタビュー:Hiro Kano

Washoku Oceania Network(WON)が主催する「第20回 食べて見て座談会」。
開催まで残り1か月。

今回は、次回の座談会で講師を務めていただく Hiro さんに、料理のルーツや料理哲学、オーストラリアでの挑戦について伺いました。

「美味しい店は忘れるけど、見守られた店は忘れない」
そんな格言も飛び交う、素晴らしい対談になりました。


■ インタビュー質問の始まり

――こんにちは、今日はよろしくお願いします。いや〜、今日は気楽にお話しできれば嬉しいです。こちらとしても色々聞きたいことがあるので、ざっくばらんに行きましょう。


1. 料理の道に進むきっかけは何ですか?

もともと私はレストランでマネージャーとして働いていて、ホール(フロント)からいつも “お客様の反応” を最前線で見てきました。
料理に対してのお客様の声って、シェフの方々よりもずっと早く、ダイレクトに届くんですね。

その中で気づいたのは、

“自分のやり方を変えないシェフ” と “お客様の声を柔軟に取り入れるシェフ” では、店の雰囲気も働きやすさもまったく違う。

ホール側からしても、
「お客様の声を積み重ねて改善してくれるシェフ」と働く方が、店全体の調和がとれていてやりやすかった。

その経験から、次第に私自身も料理に興味を持ち始め、

「ホールを理解している人間がキッチンに入れば、もっと良い店づくりができるんじゃないか」

と思い、少しずつ料理に携わり始めました。

若い頃には有名店から来るシェフたちと働く機会もありましたが、こだわりが強すぎて調和を乱す人も多く見てきました。

だからこそ私は、

お客様の声と自分の料理哲学をどう調和させるか

これが最も重要だと考えています。


2. これまでのキャリアで“転機”になった出来事はありますか?

今の話ともつながるんですけど、結局、同じなんですよね。

要は、私が若い頃って “怒りまくってた” シェフが多かった(笑)。
自分のやりたいことを最優先して、周りの声をまったく聞かない。

例えば塩加減ひとつでも、

「甘い/しょっぱい」という色んな意見がある。
でも、その地域で好まれる味や、その店に来るお客さんのタイプに順応できないシェフも多い。

逆に、お客様の声をちゃんと拾ってアジャストしてくれるシェフもいる。

この違いって本当に “売上に直結する” んです。

私はずっとホール側だったので、

「お客様の意見の集め方って、料理人になっても絶対活かせる」

と思い始めたんです。

だから転機というのは、実は料理人になってからじゃなく、

なる前にすでに“芽”があった。

そんな感覚です。


3. 料理をつくるときに必ず意識していることは?

どうやったら笑顔を引き出せるかな、ですね。

技術的なことはもちろん大切ですが、それだけじゃない。
料理のバックグラウンドをどこまで説明すべきか、説明が必要なのか。
素材の良さ以外に、何か工夫できることはないか。
そんなことを常に考えています。


4. 「自分らしい料理」と感じるポイントは?

無添加・無着色、自然の素材を大切にする。
ここだけは譲れません。

高級店でも、低単価の店でも、保存料や合成着色料を使わなくても、自然の素材と調味料でまかなえることはたくさんあります。

安全・安心は、店の“居心地”にも直結する。

安心があると従業員の笑顔が自然に増え、結果としてお客様も安心する。
「この店は安心できる」→「また来ようか」
という連鎖が生まれるんです。


5. 素材を選ぶときの基準は?

やっぱり 鮮度

野菜なら季節感。
オーストラリアは広い国で旬がずれることもありますが、それでも可能な限り 地産地消 を意識しています。

最終的には、

「その時いちばん良い素材」

を選ぶことに尽きます。


6. オーストラリア食材を使うときの工夫は?

クイーンズランド州に住んでいた頃、近くに食肉処理場がありました。
ロックハンプトンは “ビーフキャピタル” と言われるほどの牛肉の産地。

ただ当時は処理の方法が原始的だった時期があり、牛たちが強いストレスを感じていた。

ストレスは肉質に影響します。

だから今は、

どんな環境で育てられ、どんな処理をされているのか

ここを意識して、生産者の考えを理解しているお店を選ぶことが安心安全につながると思っています。


7. 伝統技法と新しい発想を組み合わせるときに意識していることは?

技術があってもなくても、今は情報が手に入る時代。
YouTubeもAIもある。

だから必要なのは、 クリエイティブな発想ができるかどうか

難しく考えず、

“自分が楽しいかどうか”

これが一番大事。
楽しさは、後からの“おいしい”につながります。


8. 最近取り組んだ新しい技術・挑戦は?

手巻き寿司です。


9. 驚きや感動を生む工夫は?

NO-MSG、保存料なし、No artificial。
まずはそこから。


10. これは使える、素晴らしいと思う技法はありますか?

スロークックですね。
栄養面、保存性、調理時間の短縮、食品ロス対策にも役立ちます。
昔からある技法ですが、現代的に活かせる部分が多いと思います。


11. この仕事の一番の喜びは?

笑顔があったかどうか。

味の評価ももちろん嬉しいけれど、サービス全体として満足してくれたかどうか。

「美味しい店は忘れるけど、見守られた店は忘れない」
これは本当にそう感じます。


12. 苦しかった時期や乗り越えた経験は?

苦しい時期はいくらでもあります。でも大事なのは、

“その時に誰が自分を信じてくれたか”。

困った時って、実は精神的な困りごとのほうが多い。
物理的な問題より、人との関係が支えてくれます。
そこが一番大きかったですね。


13. 料理人として、これだけは譲れない価値観は?

あまりないんですよね。

ただ、最低限として、

賞味期限切れ・使い回しなどの低レベルなことは絶対にやらない。
そして、
自分の満足度だけに固執しない。お客さんの満足度も大事にする。

これだけは譲れません。


14. 今後取り組みたいプロジェクトはありますか?

定義としては、「店とは何か?」。

「あそこ行ったらハッピーで帰れる」
これが“ハッピープロジェクト”。

料理の記憶は半年持たないことも多いけれど、

「楽しかった」
「誕生日会が良かった」
「居心地がよかった」

こういう記憶は一生残ることもあります。

料理はアベレージ以上でいい。
その代わり、

不満足度は絶対に避ける。

総合的に「行ってよかった」と思ってもらえる店。
それを作るプロジェクトです。


15. 「これからの食の世界」に必要な価値観は?

安全性。
もう、それに尽きます。


16. 若い料理人や未来の料理人に伝えたいことは?

まずは「習うより慣れろ!」と伝えたいですね。

そして、技術を磨くことは大切だけど、それだけが全てじゃない。

自分がどんな素質を持っているのか。
明るいのか、おとなしいのか、活発か、ゆっくりか。

“自分の見極め” が職場選びを左右する。

この手巻き講座や、何かの機会を通して、自分の方向性を見つめてみてほしい。
そんな思いです。


17. 最後に一言、伝えたいことは?

今、何かにフォーカスしている人がいたら、それだけで伸びしろがある。
臆せずチャレンジしてほしい。

懐石でも、ラーメンでも、おにぎりでも、手巻き寿司でも OK。

私は料理畑の人間ではなかったけれど、パッションがある。
そしてパッションに勝るものはない。

やりたいことがあるなら、どんどん組み合わせてみたらいい。
食べさせてみて、自分でも食べてみて、「違ったな」でいい。

やらないと分からない。
固く考えず、楽しんでやってほしいですね。


■ インタビュー終了の会話

――今日は本当にたくさんのお話をありがとうございました。

こちらこそ、思い返しながら話すのが楽しかったです。改めて自分の原点も確認できました。

――次回の座談会もますます楽しみになりました。

僕も皆さんと一緒に料理を囲みながら話せるのが楽しみです。僕の手巻き寿司の講座を見て食べてみて、感じたことを教えてください。

――当日は参加者の皆さんにも、Hiroさんの“料理の視点”を体感してほしいです。

そうですね。気負わず、自由に楽しんでもらえたら。それが一番嬉しいです。

――では当日に向けて準備を進めていきます。今日はありがとうございました!

ありがとうございました。当日お会いしましょう。


■ 次回イベントのご案内(料理人のみ)

食べて見て座談会
開催日:2月2日(月曜日)14:00~ (約2時間)
テーマ:手巻き寿司
場所:Dekura Studio (Chatswood)
参加費:$50
※応募者多数の場合は抽選となります。

▶ 参加申し込みは NPO サイトから、まずは無料の個人登録をお願いします。
※今回はシェフのみ対象ですが、次回は一般の方も参加できる企画を予定しています。
※座談会の取材が可能な方は個別にご連絡ください。
washokuoceanianetwork@gmail.com