第20回 食べて見て座談会 活動報告
第20回「食べて見て座談会」
2026年2月2日(月曜日)、記念すべき第20回目となる「食べて見て座談会」が開催されました。
本イベントは、2020年10月の第1回開催以来、日本食・和食を軸に「食べる・見る・考える」体験を共有する場として継続されてきました。
第19回からは NPO法人 オセアニア日本食レストラン協会(WASHOKU OCEANIA NETWORK/通称 WON) が主催を引き継ぎ、今回が NPO主催として第2回目 の開催となります。
当日は天候にも恵まれ、開始前から参加者が集まり、和やかながらもどこか“学びの場”としての緊張感を感じさせる雰囲気の中でスタートしました。

座談会スタート|場づくりから始まる学び (14:00)
定刻通り座談会がスタート。
司会進行は、前回講師も務めた WON代表・Takumi Kawano 氏。
イベントの趣旨と当日の流れが説明され、続いて参加者それぞれの自己紹介が行われました。
料理人、飲食関係者、食文化に関心を持つ参加者など、多様なバックグラウンドが集まることで、最初から活発な空気が生まれます。

表彰とともに始まる「まな板びらき」
座談会の冒頭では、まずひとつの表彰が行われました。
昨年、Takumi Kawano 氏が
- 日本調理技能士連合会より「日本料理 第五勲位 匠生」
- 四條司家より「包匠師範」
という二つの称号を授与されたことが紹介され、出倉氏より、会場で正式に表彰されました。
これらの称号は、単に技術力を評価するものではなく、
日本料理が受け継いできた精神性や所作、命への向き合い方を体現してきた者に与えられるものです。
今回の座談会は、その歩みを共有する場でもありました。

まな板びらき|「場」を整える
表彰に続き、イベントの幕開けとして 「まな板びらき」 が執り行われました。
進行役は Yuri Tazunoki 氏 が務めました。
日本の伝統儀礼である 包丁式(ほうちょうしき) は、平安時代から千年以上にわたって受け継がれてきました。
その中で、まな板は単なる調理道具ではなく、命と向き合うための神聖な場所とされています。
「まな板びらき」とは、新しく清らかなまな板を正式に使い始めるための儀式。
包丁を入れる前に、まず空間を清め、心を整え、食材の命に感謝と敬意を捧げる。
日本料理が大切にしてきた精神性が、この静かな所作の中に込められています。

まな板清め|道具への感謝と食の安全を祈る
続いて行われたのが まな板清め。
これは単に道具を洗う行為ではありません。
まな板は、食材=命を直接扱う最も重要な道具。
古来より「神の宿る場所」とされてきました。
そのため、塩と酒を用いて
- 四隅に塩を振り、空間を清め
- 酒を含ませた布で丁寧に表面を拭き
- 最後に一礼し、無病息災と食の安全を祈ります
厄を祓い、道具への感謝を示し、新しい一年の料理の無事を願う――
まな板清めには、そうした意味が込められています。
清めの後、縁起の良い食材を切ることで、
一連の まな板びらき は静かに締めくくられました。

実践と対話へ
こうして整えられた空間の中で、次はいよいよ実践の料理講習へ。
儀式で心と場を整える――
この流れそのものが、日本料理の根底にある考え方を体験する時間となりました。
料理を作り、味わい、そして語り合う。
この後の 食べて見て座談会 へと、自然に場は移っていきます。

キッチンへ移動|手巻き寿司講習スタート (14:30)
キッチンに移動し、今回のメインプログラムである 手巻き寿司の実践講習 がスタート。
当日の役割分担
- Takumi Kawano:調理補助・全体サポート
- Yuri Tazunoki:まな板開きの司会、写真・動画撮影
- Ohuchi Takashi:調理補助
- Ryota Kumasaka:Hiroシェフの通訳
参加者一人ひとりにメモ用紙とボールペンが配布され、「見て終わり」「食べて終わり」にしない工夫が施されました。

手巻き寿司講習の内容
今回の講習では、以下の手巻き寿司が紹介されました。
- サーモン&アボカド
- 和牛シガー
- うなぎ&きゅうり
- ポークハラペーニョ
- フォワグラとリンゴのコンポート
- ホタテとXO醤
味付け
- そのまま素材の味を楽しむ
- またはスポイト醤油で微調整
講習の進め方(1種類ずつ)
- Hiroシェフが実演
- その手巻きの特徴・意図を解説
- 参加者全員が実際に作って試食
この流れを繰り返す形式で進行しました。
食材は事前に準備され、スペースの都合上、3〜4人で一皿を共有。
手巻きスタンドは各自1つずつ用意され、プロの現場でも家庭でも応用可能な段取りが意識されています。

なぜHiroシェフは「手巻き」を選んだのか
講習の冒頭で、Hiroシェフから語られたのは「なぜ手巻きを選んだのか」という話でした。
- 手巻き寿司は、日本では家庭料理として親しまれてきた存在
- それが海外、とくにアメリカで再解釈され、広がっていった背景
- 和食ブームの中で、体験型・参加型としての可能性
そうした思いから、手巻き専門店を立ち上げた経緯が共有されました。

質問と対話|現場の知恵が交差する時間
続いて、参加者からの質問タイムへ。
- 海苔を温める機械の秘密
- 手巻きスタンドを作った経緯
- 店舗で手巻きを提供する際に気をつけていること
- 実際に人気のある手巻きは何か
Hiroシェフの回答を受けて、さらに参加している料理人たちから
「自分の店ならどうするか」
「この考え方をどう応用できるか」
といった意見交換が行われました。
正解を出す場ではなく、考え方を持ち帰る場。
この座談会らしい時間が流れます。

テーブルでの座談会 (15:30)
キッチンでの講習を終え、テーブルへ移動。
さらに自由な対話が続きます。
料理から会話まで、一連の流れそのものが「体験」として設計されていました。

クロージング (16:00)
第20回の座談会は締めくくられました。

おわりに
第20回「食べて見て座談会」は、料理技術だけでなく、
考え方・視点・現場での工夫を共有する濃密な時間となりました。
参加者からは
「すぐに現場で試したい」
「手巻きの見方が変わった」
といった声も寄せられています。
WONでは今後も、料理人や食文化に関わる方々と共に、日本食の可能性を探求し、発信していく予定です。
イベントは 登録会員(無料) へ優先案内を行っています。
興味のある方はぜひご登録ください。
また、「自分もこんなテーマで話してみたい」という方の講師参加も歓迎しています。
ご参加いただいた皆さま(アルファベット順)
今回の第20回「食べて見て座談会」には、総勢21人。
現場で活躍されている料理人や飲食関係者を中心に、さまざまな立場・バックグラウンドを持つ方々にご参加いただきました。
ここに、当日ご参加くださった皆さまのお名前を記し、心より感謝申し上げます。
- Akira Horikawa(Omakase at Prefecture 48)
- Araya Saeteng(Melbourne, Domo)
- Enzo(WAKA)
- Gaku(WAKA)
- Grin Jun(Melbourne, Domo)
- Hiroshi Manaka(FIVE at Prefecture 48)
- Kaz(Osaka Bar)
- Sarah(Ouchi)
- Sou Kim(MITTO)
- Stan(Tento)
- Tomoki(WAKA)
- Yong Lee(MITTO)
※敬称略/アルファベット順
NPO役員
- Takumi Kawano
- Yuri Tazunoki
- Ohuchi Takashi
- Ryota Kumasaka
特別顧問
- Hideo Dekura(Advisor)
スペシャルプレゼンター(手巻き専門店 Norimonoメンバー)
- Hiro Kano (講師)
- Ferdinan (Owner)
- Winnie (chef)
norimono | Japanese Hand Roll Bar | Sydney
69 Willoughby Road Crows Nest NSW 2065
それぞれが異なる現場・文化・経験を持ち寄り、「料理をどう捉え、どう伝え、どう活かすか」という視点での対話が生まれたことは、この座談会の大きな価値だったと感じています。
改めまして、ご参加いただいた皆さまに深く感謝申し上げます。