3 Mar
Culture BY Takumi Kawano

ひな祭り:彩りに込められた食の哲学と健やかな成長への祈り

3月に入り、ここオーストラリアでは秋の気配が少しずつ深まってまいりました。しかし、日本において3月3日は「桃の節句」とも呼ばれる「ひな祭り」の日であり、春の訪れを祝う最も華やかな伝統行事の一つです。 ひな祭りは、単に雛人形を飾るだけでなく、和食の真髄である「季節感」と「食材への意味付け」を学ぶ上で非常に重要な日でもあります。 食文化に込められた象徴と願い ひな祭りに供される料理には、それぞれ子どもの健やかな成長と幸せを願う、深い意味が込められています。 ■ ちらし寿司 エビ(腰が曲がるまでの長寿)、レンコン(先を見通す力)、豆(まめに働き健康に暮らす)など、縁起の良い具材を散りばめます。自然の恵みを最大限に活かし、視覚的な美しさと栄養バランスを両立させる和食の知恵の結晶です。 ■ 蛤(はまぐり)のお吸い物 蛤の貝殻は、対になっているもの以外とは決して重なり合いません。この特性から「一生添い遂げる良きパートナーとの巡り合わせ」を象徴しています。 ■ 菱餅(ひしもち)と三色の意味 桃色・白・緑の三層には、それぞれ次の意味があります。 桃色:魔除け(桃の花) 白:清浄(雪) 緑:健康と生命力(若草) 雪の下から新芽が芽吹き、やがて桃の花が咲く――春の移ろいを一つの菓子に表現しています。 さらにこの三色は、和食の思想的背景である「陰陽五行」の調和を象徴するとも考えられています。色彩・季節・生命の循環を食を通じて学ぶ、日本独自の教育的な食文化の表れです。 ■ 邪気を払う白酒(しろざけ) もともとは桃の花びらを浸した「桃花酒」を飲む習慣がありました。桃には古来より邪気を払う力があると信じられており、「食による浄化」という和食の精神が表れています。 南半球で祝う、和食の精神 オーストラリアで暮らす私たちにとって、3月のひな祭りは季節こそ逆転していますが、和食が大切にする 家族の健康を願う心 自然への畏敬の念 これらの価値観に変わりはありません。 「ひしもち」の三色が表す生命の輝きは、秋の収穫を祝うオーストラリアの風景とも共鳴します。現地の豊かな食材を活かしながら日本の精神を取り入れることで、多文化社会における新しい食の楽しみ方が生まれると私たちは信じています。 私たちの活動について 当NPO団体では、和食の背景にある文化や歴史を正しく伝え、次世代へ繋ぐ活動を行っています。 定期的なワークショップや文化交流イベントを通じて、食卓から始まる豊かなライフスタイルを共に学びませんか。 今後の活動スケジュールや会員登録の詳細については、[Event – Washoku Oceania Network] よりご確認いただけます。
3 Feb
Culture BY Takumi Kawano

オーストラリアの恵みで「恵方巻き」をつくるということ

― 伝統を“守る”のではなく、“つなぐ”という選択 ― 節分は、日本では「無病息災」を願う大切な行事です。 豆まきをし、恵方を向いて恵方巻きを食べる。 多くの人が子どもの頃から当たり前のように触れてきた、日本の食文化の一つでしょう。 では、その文化を日本の外で生きる私たちは、どう受け取ればいいのでしょうか。 「日本と同じもの」を再現するだけが、正解なのか? 海外で日本食を伝える活動をしていると、よくこんな問いにぶつかります。 日本と同じ材料が手に入らない 味や見た目をどこまで再現すべきか それは“本物”なのか? もちろん、伝統を正確に伝えることは大切です。 しかし同時に、私はこうも思います。 文化は、土地に根を張ってこそ、生き続けるのではないか。 オール・オーストラリア食材でつくる恵方巻き 今年の節分、私たちは 「オーストラリアの食材だけで、恵方巻きを再構築する」 という試みを行いました。 七福神にちなんだ、7つの食材です。 Lebanese Cucumber 日本のきゅうりに近い食感。体を整える、爽やかな役割 Roasted Beetroot 鮮やかな色彩と、ポリフェノールの力 Portobello Mushroom バルサミコと黒糖でソテー。椎茸に勝るとも劣らない旨味とβグルカン Pan Fried Halloumi 焼いたハルーミの弾力を、卵焼きの新しい解釈として Tasmanian Salmon EPA・DHAを豊富に含む、オーストラリアが誇る健康的な魚 Tiger Prawn ぷりぷりの食感と、赤色の縁起の良さ Pickled Yellow Capsicum たくあん代わりのポリポリ感。ビタミンCで全体のバランスを 料理人の遊び心と、その土地の知恵 隠し味として、 ベジマイトを、わさびの代わりに使いました。 寿司酢には、 アップルビネガー × ウイスキーを少量加え、 オーストラリアらしい奥行きを。 「日本らしさ」を失わないために、 あえて“日本と同じにしない”。 それもまた、料理人としての一つの誠実さだと考えています。 南南東は、オーストラリアだった […]
3 Feb
Culture BY Takumi Kawano

Making Ehomaki with Australia’s Bounty

— Choosing to Connect Tradition, Not Just Preserve It — In Japan, Setsubun is an important seasonal event, marked by prayers for good health and protection from illness. People throw roasted soybeans, face the auspicious direction of the year, and eat Ehomaki in silence. For many, this is a food custom they’ve known since childhood—an […]
14 Jan
Culture BY Takumi Kawano

What is The Manaita-biraki まな板開き(包丁式)

Manaita-biraki — A Ritual of Gratitude, Skill, and Respect for Life — Every New Year, Japanese chefs begin their work not with cooking, but with prayer and ritual. Manaita-biraki, literally meaning “opening the cutting board,” is a traditional ceremony marking the first use of knives and cutting boards of the year. Rooted in Shinto belief, […]